一年のなかでも特に過ごしやすい秋の始まりを知らせる秋分の日。国民の祝日であり、彼岸の中日であり、「祖先を敬い、なくなった人々をしのぶ。」ことを趣旨としている日です。
「暑さ寒さも彼岸まで」といわれ、秋分の日を境に暑さがだんだんとやわらぎます。春分と同じで真東から太陽が昇り、真西に沈むこの日は、あの世とこの世が通じやすくなるという考えで、先祖の供養をするようになりました。これは日本独特な文化です。春分の日は春の訪れを祝う意味合いが強いですが、秋分の日は先祖を敬う意味合いが色濃いのかもしれませんね。
<令和3年・秋のお彼岸>
彼岸入り:9月20日(月)
中日(秋分の日):9月23日(木)
彼岸明け:9月26日(日)
(別名曼珠沙華。サンスクリット語で天界に咲く花。)
この時期になると彼岸花が墓地や田んぼの周りに多く生育しています。これは決して偶然ではなく、彼岸花はアルカロイド系の猛毒があります。特に球根部分に毒の成分が多く含まれており、誤って口にすれば、呼吸困難や、麻痺などを引き起こします。この毒を利用して、田畑を荒らすモグラやネズミから大切な先祖の墓や田んぼを守るために植えられたといわれています。それがそのまま残り、今日の秋分の日の頃に彩りを添えることとなったのだそうです。
私が住んでいる地区では今でも春と秋のお彼岸に「お弘法さん」という行事があります。私が子どもの頃は、お菓子をもらえる日としか認識していませんでした。しかし、大人になった今は真言宗の開祖である弘法大師はどんな方なのかな、と思うようになりました。
(秋桜が美しい)
山岡町に爪切り地蔵尊という地蔵菩薩像があります。これは、弘法大師が一夜の間に爪で像を刻まれたと言い伝えられています。斜めに傾いたままになっていますが、真っすぐにすると厄がおこり、疫病災難が発生するとあります。人々は幾度と疫病災難に見舞われ、今に至るまでにそれを乗り越えてきたのだな、と改めて思います。
写真は午後四時過ぎに撮ったものです。朝日の方がよい写真が撮れるかもしれないと思い、次の朝もう一度お参りにいきました。車から降りると、ふっとお線香の香りが。残りわずかとなったお線香から煙が揺らいでいるのを見て、今日も一日無事に過ごせるような気がしました。
今えなえーるでは、「栗百科」の展示を行っています。恵那市では栗きんとんなどの栗菓子が有名で、栗の栽培は収量・美味しさともに全国でもトップクラス。この時期のお土産には栗のお菓子が喜ばれますよね。そんな恵那栗のことが知れるパネル展示です。歴史のパネルには、栗を食べることで厄除けをしたとあります。
たしか、おはぎは邪気を払うお供えだったはず。今年のおはぎには、中に栗を入れてみようと思っています。年中行事とその時期に咲く花、収穫するものと食事は繋がっています。こうして子供達にも「祖先を敬い、なくなった人々をしのぶ。」ことを伝えていきたいと思います。
KOTOMI MIZUNO
恵那市明智町出身。Uターン在住。着付け師。
山での暮らしに魅了され、お着物の沼に落ち、お出汁は毎日引いています。
えなえーるでは暦、節句を担当。季節の移ろいを感じて表現していきたいです。
髪は盛りたい願望あり。日々是好日。