恵那の暦・二十四節気『小満』

木々が若葉に覆われ青々しく成長し、汗ばむ陽気になりました。万物の成長する気が次第に長じて天地に満ち始めることから小満といわれています。

今年は桜の開花も早く、春が駆け足でしたが、しばらくは朝と夜が冷え込みましたね。発芽した双葉が次の葉を出すまで少しゆっくりだったようです。それでも、最近はぐっと気温も上がり、日中の暑さが加わり畑の野菜も盛んに伸び、葉を茂らせ花を咲かせます。

4月29日の大江自然農園。今はどのぐらい成長したのだろう?

炎立つ(ほむらたつ)とは、火が燃え上がる様子を言います。まさしくこの頃のえんどう豆の成長がそうだと生産者さんが表現されていました。毎日伸びるえんどう豆のつるはまるで『炎立つ』。それは日々自然と向き合っているからこその表現力だと思います。

二十四節気の小満は、よく耳にする節気ではありませんでした。しかし万物の成長する気が満ち始める時期として周囲を見渡せば、その通り。それぞれに実りの時があることを教えてくれる時期です。

「山笑う」から「山滴る」へと夏山に変わりました。日本の広葉樹では一番大きい葉とされる朴の葉が気持ちよさそうに揺れています。その葉で包まれた朴葉寿司が作られるのもまさに今。大きな葉を見れば、この時期がどれだけ満ちているのかが分かる気もします。

恵那で生まれ育った私は、幼いころから朴葉寿司が大好物でした。家族のみんなにそれぞれの役割がありました。机いっぱいに並べられた大きな朴の葉、甘いピンクの桜でんぶ。朴の葉は初夏を想起する香りが特徴です。それと同時に私は、酢飯のつんとする香り、ツナの甘辛煮の香りも初夏の記憶です。

えなえーるは【恵那の朴葉寿司プロジェクト】の活動の拠点になっています。このプロジェクトは、朴葉寿司を広く知ってもらいたい、多くの人に作ってもらいたいという方々が集まり、市のたべる事業として展開しています。発足から一年、朴葉寿司まつりを開催するまでになりました――が、開催を目前にして、新型コロナウィルスの流行拡大の影響により延期となりました。残念ではありますが朴葉寿司まつりは目標までの通過点。発起人含めメンバーの熱い思いは満ち満ちています。

大きな朴の葉に包まれ、それを広げた時の高揚感、おもてなしの心。そんな季節の楽しみが恵那市民でシェア出来たら素敵なことです。誰もが情報を発信できる時代に突入してもう数年が経ちました。発信できるツールも多様化しています。そんな今だからこそ、これからは「食べる」という共通言語を使い、個と個が繋がって今までになかった価値を生み出すことが可能です。郷土料理の朴葉寿司にはその力があることを信じています。

最後に『炎立つ』気を感じていきたいと締めくくるはずでしたが、小満に入る前に梅雨入りが発表されました。例年よりも20日以上早いそうです。今の気持ちを表す言葉が見つからないです。ただ、日本語には雨にまつわる言葉が1200種類もあるそうです。名前が多いという事はそれだけ違いを認識しているという事。私はこの『炎立つ』小満の候、雨の名前を勉強する時期にもなりそうです。

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KOTOMI MIZUNO

恵那市明智町出身。Uターン在住。着付け師。 
山での暮らしに魅了され、お着物の沼に落ち、お出汁は毎日引いています。
えなえーるでは暦、節句を担当。季節の移ろいを感じて表現していきたいです。
髪は盛りたい願望あり。日々是好日。

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