恵那の処暑
厳しい暑さの峠を越した頃です。朝夕には涼しい風が吹き、心地よい虫の声が聞こえてきます。この心地良さの理由に、日本人が虫の音を言語脳で受けとめているということもあるようです。「虫の音」を「虫の声」として聞いているということ。こういった独特の文化で、多様な季節を感じてきた感性を大切にしていきたいと思います。
夏休みも終盤に差し掛かりました。お盆を過ぎると川の水がぐっと冷たくなります。田んぼの稲が実り始め、実りの秋の到来を感じさせます。青かった栗のいがも大きくなり茶色くなり、南瓜が採れるようになりました。夏休みは毎年こうして終わっていくのですね。
また同時に台風の季節の到来でもあります。この時期の天気は文明の利器が発達した今日でも、その日の午後の天気が分からないものです。自然の中にいると、人の力ではどうしようもないことがあると学べます。
藍のたたき染め
藍の葉
植物の藍を知っていますか。伝統的に染料として用いられてきたのが藍の葉。藍の葉を百日かけて発酵させて、それをさらに藍甕(あいがめ)の中で発酵させ、その液の中で何度も染め重ねるという技法は、四季のある日本で、一年中藍染めができるように考え出された、独自の技術です。明治には海外から「ジャパン・ブルー」と称えられた、日本を象徴する色でした。
この藍の葉は、夏の始まりから秋の中旬ぐらいまでの間に、縦にも横にも大きく成長します。この時期の藍の生葉を使用する、「藍のたたき染め」を体験してきました。新鮮な葉の中に含まれるインディカンという無色の物質をたたいて布に移し、酸化させて色を付けます。葉のみにインディカンは含まれるので茎から外します。今回は布に葉をテープで留め、布の下に板を敷き、トンカチでたたいて染めました。幼い子どもから大人までが、一心不乱に布をトンカチでたたきます。デザインもそれぞれで個性が出ていました。染織の技法は様々あるものの、大きな音を立てながら、たたいて染める作業は新鮮です。
虫食いも、葉脈もそのままのアート。標高600mの涼しげな風と、虫の声の中での体験は豊かな感性を育みます。また一つ恵那の強みを知れた、夏の終わりとなりました。
この記事をシェアする
kotomi mizuno
Kimono文化(呉服販売、着付け)に触れたことで日本の暦に流されるように生活したいと思うようになりました。恵那にUターンしてから恵那の歴史や強みを知りました。恵那の強みを二十四節気で綴っています。時代の流れが速すぎてもスロウで心地良いコトやモノに触れていたいです。
土から始まり土に還る循環を学びたいと思います。畑で育てる藍、湧き出る水、山から伐りだした薪で作った灰で藍染に挑戦します。