恵那の暦・二十四節気『処暑』

厳しい暑さの峠を越すと処暑を迎えます。また、残暑はお彼岸まで続くといわれていますが、「処」には落ち着くという意味もあります。山間部である恵那市は、秋の訪れを早く感じるかもしれません。朝夕には少し冷たくなった風が吹き、心地よい虫の声が聞こえてきます。暑さが和らぎ、穀物が実り始める時期です。

穀物といえば田んぼの稲です。穂が実り始めているのが分かります。稲の香りはこの時期特有です。「実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」は、学徳が深まるとかえって謙虚になることのたとえです。香りは記憶に残りやすいといわれますが、この時期を迎えると謙虚でありたいな、と思うことが出来ますね。

さて、穂の香りとともに台風が多く発生する時期です。台風を警戒する日の「二百十日(にひゃくとおか)」は農家の三大厄日のひとつです。現在のように台風の予測ができなかった時代、立春から数えて210日目に台風が来る確率が高いことを警戒しました。

今年は台風に関係なく大雨が降りました。九月に入ってからの長い雨を「秋の長雨(ながさめ)」といいますが、立秋に続いた雨はなんと表現するのでしょうか。私も畑仕事を始めたのもあって、晴れる日を祈るように待っています。

(束の間の太陽。秋の雲はさば雲、いわし雲、うろこ雲、ひつじ雲があるとか。)

恵那山の麓に「風神神社」があります。ここは、本殿の背後に風穴があり、そこから一年中、風が吹き出ていると聞きました。天候を司る風神を祀っているとのことで、五穀豊穣や豊作祈願を目的として多くの方が参拝に訪れるそうです。毎年8月31日の大祭の時のみ、風穴が開けられて台風の到来を予想する神事が行われるのだとか。古くから農作業と暦がどれだけ大切だったかと改めて、知ることになります。

この長雨で畑仕事は思ったようにならないことばかりでした。天候のせいにしない農を志すにはどうすれば良いのでしょうか。大いなる自然から学び、頭を垂れる稲穂のように実っていくには?私の農はまだ始まったばかりです。

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KOTOMI MIZUNO

恵那市明智町出身。Uターン在住。着付け師。 
山での暮らしに魅了され、お着物の沼に落ち、お出汁は毎日引いています。
えなえーるでは暦、節句を担当。季節の移ろいを感じて表現していきたいです。
髪は盛りたい願望あり。日々是好日。

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