恵那の暦・二十四節気『立夏』

「夏が立つ」 夏の兆しが見え始める頃という意味で、陽気も増し夏の気配を感じる時期です。蛙の大合唱がBGMになり、ミミズも動き出し土壌を豊かにしてくれます。

そして恵那市では田植えの時期を迎えます。すっかり葉桜になり、風薫るこの立夏の時期、そこかしこで田んぼに水をはって代掻き作業するトラクターの姿が見られます。

皆さんは恵那のお米をアピールできますか?恵那市内で収穫したお米を含む美濃のコシヒカリは、日本穀物検定協会による食味ランキングにおいて何度も最高ランクの特Aとして認定されたお米です。

そして田植えから収穫、奉納までの神事を受け継いでいる、恵奈の里 次米みのり祭も有名です。奈良県で発見された7世紀後半の物と推測される木簡に、「恵那のお米が当時の都へ献上された」という記録が残っていました。

また、恵那市中野方町には、日本の棚田100選で選ばれた坂折棚田があります。江戸時代から明治時代に築造された石積棚田で、多くは今もなお昔のまま残っています。棚田の水源としての山林を育み、一つの巨大な循環システムを作り上げており、それを今日まで守ってこられた方々がいることも恵那の誇りです。

棚田を見ていると、文化が成熟する前の精神的な豊かさを感じます。かつては一人では出来なかった、他人とともに行われる田植えという作業。自然、動物やコミュニティが繋がり、新しい命がここで育てられたのです。有機的なものに溢れた世界、その尊さが写真からも伝わります。

いまは、情報が多く、物が溢れている反面、精神は貧しくなり、想像力が乏しく脆弱化しているようにさえ感じてしまいます。発達した社会において失われつつあるものを思い起こさせる棚田。子ども達にはどう見えるのでしょう?見せてあげたいと思いました。

えなえーるでは、みそ玉、朴葉寿司、五平餅、塩麴、お雛祭りのからすみなどの郷土料理の動画撮影や講座を開催してきました。どれもお米は必須で、やはり日本人はお米失くして食を語れません。

今回田植えについて触れることは、緊張感がありました。米どころの恵那市に敬意を払いながら、そして人の数だけお米に対する思いがあると思うと身の引き締まる思いだったからです。お米には神が宿ると言いますが「土・風・雲・水・虫・太陽・作り手」の7つを意味しているという説もあります。

今年は季節の移ろいも早く、春が駆け足に感じました。着物は桜の時期に桜の帯は野暮なんて言われることもあります。だから野暮にならない文章にしたいと焦る気持ちもありました。

長島町 千田のヒトツバタゴ

しかし田んぼを中心とした里山の文化や歴史に触れ、良い文章を書こうとすることが不自然だと思いました。自然の流れを素直に綴れば良いよと言ってくれる仲間もいます。世の中がどうであれこの時期に蛙の大合唱が始まり、田植えが行われます。蛙とは春の季語。雨蛙となると夏の季語です。

さあ皆さん、暦の上では夏になります。

KOTOMI MIZUNO

KOTOMI MIZUNO

恵那市明智町出身。Uターン在住。着付け師。 
山での暮らしに魅了され、お着物の沼に落ち、お出汁は毎日引いています。
えなえーるでは暦、節句を担当。季節の移ろいを感じて表現していきたいです。
髪は盛りたい願望あり。日々是好日。

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