恵那の暦・二十四節気『穀雨』

田畑の準備が整い、それに合わせて春の雨の降る時期です。穀雨とは、穀物の成長を助ける雨のことです。

二十四節気を眺めてみると「雨」がつくのは初春の「雨水」と晩春の「穀雨」だけ。その他の季節に雨はないのでしょうか。秋は「露」と「霜」冬は「雪」と季節ごとに形を変えていました。やはり雨は一年を通して日本の季節には欠かせないのですね。

春になって降るあたたかな雨がこれからの田畑にとっていかに大事であるかを私は祖母に教わったことを思い出します。ひと雨ごとに大地に芽吹いた双葉や、木の芽が緑を深め大きくなっていく姿が、私たちの目にもあきらかにわかる時節です。

春の季語「山笑う」は三月下旬までの時候の挨拶とされます。いまの山は全身で喜びを感じる学生の頃のような、そんな「山笑う」を感じます。

そして雨が上がり、晴れ間が見えると虹が出やすい時期でもあります。虹は大蛇にたとえられているそうで、そのため虹という字に虫偏がつくという説があります。山から空にかかる大きな蛇はまさしく龍。空いっぱいにかかる虹は一瞬で人々を笑顔にします。

恵那市文化財「八方睨みの龍」

そしてそんな山からは、次々に筍、こごみ、タラの芽、わらび、ふきなど大地の恵みを頂けます。土の香りと独特の苦みはこの時期だけのご馳走です。私は雨が降った次の日に山に入り、恩恵にあずかるのです。

私は山あいで育ったので毎日毎日山菜は飽き飽きするほど食べてきました。それでもこの時期になると待ち遠しくなるのが不思議ですね。

立春で触れましたが、穀雨の終わりごろ八十八夜があります。「八十八」という文字を組み合わせると「米」の文字になります。そのことから八十八夜に種まきをすると、秋においしいお米が収穫できるといわれていました。末広がりの八が重なることから、縁起のいい農の吉日ともされます。

「八十八夜の別れ霜」などといわれるように、遅霜が発生するかもしれません。この頃までは種を撒くタイミング、発芽した苗が駄目にならないための配慮がいる時期です。

私もこの度、種を蒔きました。日本にもっとも古く渡ってきた染料植物とされている『藍』を育てます。二十四節気は農業において欠かせない情報です。私も植物を育てることでこれからの文章に深みを増せたらいいなと思っています。

蒔いた種が芽を出した時の嬉しさや、新鮮な山菜をほおばり幸せを感じる時。また虹を見つけて写真を撮る瞬間も笑っているように思います。暖かくなったこの時期の雨が好きな人も多いかもしれません。私も「笑う」を意識して過ごしたいなと思いました。

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KOTOMI MIZUNO

恵那市明智町出身。Uターン在住。着付け師。 
山での暮らしに魅了され、お着物の沼に落ち、お出汁は毎日引いています。
えなえーるでは暦、節句を担当。季節の移ろいを感じて表現していきたいです。
髪は盛りたい願望あり。日々是好日。

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