恵那の暦・二十四節気「冬至」

山々の広葉樹が色を失くす頃、恵那では雪が舞いました。厳しい寒さに閉じ込められた冬の色は輝いています。この時期の色を日本人は大切にしてきたのだな、と思います。厳しい自然の景観から発生した色彩は強さと柔らかさがあり、冬色が清らかさを際立たせます。

吸った空気が冷たくて気管から肺まで清らかになったような気がします。

冬至とは一年でもっとも昼が短く、夜が長いころのこと。これから日が延びていくことから、古代には冬至が一年の始まりだったようです。そんなことから、ブログを冬至から始めることにしました。これから明るくなっていくというイメージです。

冬至には、運盛りを設えます。無事に一年が終わったことに感謝を込めて、来る年の『運』を願う盛りものです。一年の締めを『ん』の字に託し『ん』で終わる名前の盆果を飾ります。

『ん』のつく食べ物はこちら。冬至の七種と言われています。『ん』が二回重なる食べ物が選ばれていますが、大根、蒟蒻も恵那市らしいですね。来年は恵那市の運盛りを設えてみるのも素敵ですね。

南京南瓜    なんきんかぼちゃ

寒天      かんてん

銀杏      ぎんなん

人参      にんじん

饂飩      うんどん

蓮根      れんこん

金環      きんかん

お正月になくてはならない「菊ごぼう」は冬至の頃出荷が始まります。美濃伝統野菜に選ばれています。方言では「ごんぼ」と言いますね。運を運んでくるに違いありません。

今回の生産者さんは、koike lab.代表の小池菜摘さんにお話を聞かせて頂きました。菜摘さんはとにかく肩書がたくさんあります。ブログ内では書ききれません。「写真家百姓」と名乗っておられます。

菜摘さんの冬至を感じる瞬間は、菊ごぼうの葉が枯れたときだそうです。夜間気温がぐっと下がり、菊ごぼうは葉が枯れると収穫適期。菜摘さんは、そんな菊ごぼうを「変な奴」と敬愛していました。

その話を聞いた私は枯れても良いんだ、と思いました。ポジティブな気持ちになりました。野菜というのは、葉も青々としていて、土の下も立派に育つという印象を持っていたからです。まるで人生です。いろんな生き方があります。

しかも切ったら菊の花が咲いたような、星のような、美しい黄金比です。もちろん滋養強壮の薬草と珍重されていただけあって栄養価は書くまでもないでしょう。菊ごぼうがないとお正月が来た気がしないという人も多いのです。その感覚残したいですよね。私は「変な奴」を好きになりました。菊ごぼうなしのお正月はすでに考えられません!

この菊ごぼう、今では作っている生産者さんが少ないと聞きました。なぜ少ないのか、なぜ菜摘さんのような若い方が生産スキルがあるのでしょうか。

実際に菜摘さんご主人の祖父さんも、十年前に作るのを止めたそうです。それを復活させたくて、継いだ2014年から挑戦していたそうです。試行錯誤の末、販売出来たのが2019年。栽培が難しいだけではなく、種や資材にコストがかかります。手間も恐ろしいほどかかります。寒さが厳しい冬至の時期に這いつくばって収穫する菊ごぼう。生産者さんが少ないのが分かりました。高齢化の壁もあったことでしょう。

一度終わらせてしまった「ものづくり」の復活に時間を費やしてこられた菜摘さん。そして今後も続けていかれると思います。清らかです。マスクを外して深呼吸したくなりました。

「写真家百姓」と言われてるだけあります。もっともっとストーリーがあるはずです。「運盛り」の設えとともに、菜摘さんのとびきりの笑顔で来る年の運を願いましょう。

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kotomi mizuno

恵那市明智町出身。Uターン在住。着付け師。 
山での暮らしに魅了され、お着物の沼に落ち、お出汁は毎日引いています。
えなえーるでは暦、節句を担当。季節の移ろいを感じて表現していきたいです。
髪は盛りたい願望あり。日々是好日。

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